電動ドライバ、何がいい?
前記事『木ネジ:あるある失敗例』 でも書きましたが、DIYの木工作業が丸釘からコーススレッドなどの木ネジ中心になり、
電動ドライバが欠かせないものになりました。
ところで、電動ドライバは、大別するとインパクト・ドライバ(下画像:左)とドリル・ドライバ(下画像:右)の2種がありますが、
この2つはどう違うのでしょうか? 『どちらかを選ぶのであれば、インパクト・ドライバをオススメする』と言う人も多いですし、
ヨナデンのように『マンションでDIYを続けるなら、ドリル・ドライバの方が便利』と考える人もいます。これは、もう、どちらが
優れているということではなく、両者の特性をよく吟味して、自分の作業環境にあった方を選ぶというしかありません。
そこで、今回は、両者の特徴を整理して、読者の皆様が今後、電動ドライバをお選びになる際の参考になるようにしたい
と考えました。
ドリル・ドライバは、六角軸や丸軸などのドリルビットが着装できる
トルク調整や回転力切替などデリケートな締め付けが可能
市販で入手できるドリル・ビットの根元は、下の画像のように丸軸タイプや六角形タイプ、その他、多角形の変形タイプ
などがありますが、ドリル・ドライバのキーレス・チャックは、様々なタイプのビットが取り付けられます(一部に取り付け
られないビットもあります。また、キーレス・チャックを採用していないドリル・ドライバもあります)。
下画像は、ドリル・ドライバ先端のチャック部分です。上が3点締めの固定ツメを一番奥まで開いた時、下が一番
絞った時です。これで、ドリル径1.5mmから13mmまでのビットの取り付けが可能で、DIY用であれば、この範囲
でほとんど用は足ります。ドリルはしっかり取り付ければ、回転時のグラツキが無く、芯央が正確に出せます。
最初の図解で示したようにドリル・ドライバには、トルクを調整する『クラッチ機構』というものが付いているタイプが多く、
ヨナデンが使っている画像タイプで16段階の調整+クラッチ機能OFF(ドリル直結)の17段階の切替ができます。
トルクとは、ネジを締め付ける力のことで、設定したトルク以上の力がネジに加わると、ドリルが空回りして、締め付けすぎ
を防ぎます。これにより、ネジ頭のミゾをつぶしたり(ネジをナメたり)、木材にヒビが入ったりするミスが少なくなります。
また回転数の切替もできるので、クラッチ機構と合せて、適度な締め付けを調整できるようになっています。
ただし、トルクに関しては、一般にドリル・ドライバはインパクト・ドライバに比べて非力で、特に5000円以下の廉価タイプ
は、少し長めのネジだと満足に締められないこともあるので注意が必要です。充電式であれば12V以上のリチウム・イオン
(またはニッケル水素)バッテリーのタイプをオススメします。
話は変わりますが、木工DIYで苦労するのが、狭い個所でのネジ締めです。これは、ドリル・ドライバにも下で述べるインパクト・
ドライバ にも言えることですが、最近はコンパクトになったとはいえ電動ドライバはカサがあるので、スペース的にネジが締めら
れない場面に必ず遭遇します。そんな時、今まで本当に重宝してきたのが、下画像のL形ドライバー(カンザワ/L.PRO-75/
神沢鉄工)です。大きさの割りに少し高価なアタッチメントですが、電動ドライバの必需品ではないかと今は思っています。
構造上、使用時は電動ドライバを両手で安定させる必要があり、取っ手は、場面に応じて右・左・上側の3方向に
付け替え可能です。 また、取っ手はドライバ・ビットのケースにもなっています。
インパクト・ドライバは、六角軸のドリルビット専用
本来は六角軸ドライバの着脱だけに特化した固定方式
インパクト・ドライバは、本来、打撃力を強化した『電動ドライバ』で、穿孔用のドリルをとっかえひっかえ使うというドリル
としての役割は期待されていなかったんだと思います。しかし、現在は、インパクト・ドライバに対応したドリルがどんどん
出てきて、ドリルとして使う場面も増えてきています。
ビットの着脱は、下の画像のように『ロットリング』による固定方式で、六角軸のビットの出し入れが非常に簡単に行えます。
このロットリング固定は、微妙に『アソビ』というかグラツキがあります。これはドライバとして使う分には有利に作用するので
しょうが、ドリルとして使う場合、ドリル・ドライバほどにはドリル・ビットの中心線が固定されず、正確な芯央が出しにくい気が
します。
インパクト・ドライバは、なんといってもトルク(締め付け力)がドリル・ドライバより4~5倍程度高く、最高回転数も2倍程度ある
というハイパワーに特徴があります。締め付けは、負荷かかかると自動的に打撃が加わり、『ガ・ガ・ガ・ガ』という工事現場で
よく耳にする音が出ます。パワーがある分、ドリル・ドライバのような微妙な手加減が難しい面があります。
インパクト・ドライバは、DIYで大型の木工家具を作り、長ネジを連続して打つ場面などで大活躍しますが、マンション
DIYerにとっては、そのような機会は年に一度あるか無いかという頻度になります。しかも打撃音のため、使う場所と
時間を考えないと、ご近所の迷惑になります。ヨナデンがどちらかというと高性能のドリル・ドライバを好むのは、こんな
理由があります。
さて、インパクト・ドライバが六角軸のビット専用であることを述べましたが、アタッチメントを介して丸軸のドリルを取り付
けることも可能です。下画像のような別売の『チャック』を利用します。上が、ドリル・ドライバと同様のキーレス・チャック、
下がキー付きのドリルチャックです。
このチャックを利用する際、注意することがあります。それは、特に打撃を繰り返す抵抗の多い材質で使用すると、ドリルが
チャックに固着して外れなくなってしまうのです。ネットで検索すると『ドリルを外す方法を教えてください』という悲痛な声が
聞かれます。現に、ヨナデンの上のフォスナービットは、全く外れなくなってしまい、今は、これ自体一つのドリルビットとして
使っているという有様です(^Д^;) 皆様もくれぐれもご注意くださいませ。
ドリル・ドライバが得意でインパクト・ドライバが苦手とされる
フォスナービットの穴あけを比較してみる
インパクト・ドライバは文字どおり『打撃しながら』ドリルを回転させるので、ドリル刃に負担がかかり、また穿(うが)
たれる側の木材にも衝撃がかかるので、フォスナービットのような座くりドリルでキレイな断面の穴に仕上げる場合、
より衝撃の穏やかなドリル・ドライバの方が良いとされています。
(フォスナービットについては、 別記事『フォスナービットは”できる子”』参照)
このあたり、実際の穴の断面の仕上がりに違いがあるのか、テストしてみました。
上画像は、以前に作った香炉セットです( 前記事『灰をキレイにして落ち着く』 参照)。
40mm厚のアフリカ産の『ウェンジ』という木材を使いました。この木材は、材面に濃褐色と淡色の帯が規則的に
見られて美しく、湿った条件でも腐食しない丈夫さがあります( 前記事『木肌が美しい世界の木材』 参照)。
この木材の穿孔をインパクト・ドライバとドリル・ドライバで比較しました(下画像)。ウェンジはかなり硬い木材で、
インパクト・ドライバでフォスナービットの穿孔を始めると、打撃がすぐ始まりました。トルクはインパクト・ドライバの方が
圧倒的に高いので、同じ時間内での作業量は、ドリル・ドライバと比較すると格段にインパクト・ドライバの方が優れて
います。ただ、打撃音が気になるのと、ドリル刃に負担がかかるのか、刃が非常に熱くなるのがわかり、ドリルの寿命
を縮めているような気がしないでもありません。穿孔断面は、両ドライバともキレイに仕上がり差はありませんでした。
インパクト・ドライバの方が粗く仕上がり、場合によってはエッジの木材が衝撃で欠けるのではないかと思いましたが、
このウェンジを使ったテストを見たかぎりでは、そんなことはありませんでした。
以上、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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