もうDIYでいいよ。

優勝は19世紀の住宅

アメリカのインテリア・DIY・ライフスタイルの総合サイト、 Apartment Therapy(アパートメント・セラピー)が、

毎年行っている 『かなり狭いけど、かなりクールな、住宅コンテスト』  『Smallest Coolest Home Contest 』

の2014年優勝住宅(U.S. WINNER。今年はグランプリという名称を使わないようです。)が決定しました。

今年もヨナデンが印象的だと思ったエントリ住宅を、審査前にいくつかご紹介(『Small Cool 2014』)したの

ですが、ファイナリストには残っていませんでした。

昨年(『Small Cool 2013』)は、3例紹介して2例がファイナリストとして残り、そのうち1例が、インター

ナショナル部門で優勝して的中率が高かったのですが、今年は、かなりハズしてしまいました。

負け惜しみではありませんが、これから詳しく紹介するU.S. WINNERを除いて、今年はファイナリスト住宅

で是非ご紹介したいものがありませんでした。どんな住宅が各部門で残ったのか、ご興味のある方は、上の

リンクから元サイトに行ってみてくださいませ。

 

U.S. WINNER(アメリカ国内優勝者)というのは、下の4部門のファイナリストの中からさらに選らばれる最終

優勝者です。

◆ティニータイニー部門 (TEENY-TINY) ————36㎡(400 sq.ft.)以下

◆タイニー部門(TINY)————————————-54㎡(600 sq.ft.)~36㎡(400 sq.ft.)

◆リトル部門(LITTLE)————————————72㎡(800 sq.ft.)~54㎡(600 sq.ft.)

◆スモール部門 (SMALL) ——————————-90㎡(1000 sq.ft.)~72㎡(800 sq.ft.)

他に、インターナショナル部門の優勝者もいますが、インターナショナル部門の優勝者が上ということでは

ありません。U.S. WINNERが、事実上のグランプリといってよいと思います。

 

では、さっそく、U.S. WINNER をご紹介しましょう。

 


優勝は、19世紀(1800年代)のレジデンスのパーラーを
一住宅にしたもの。天井が極めて高いスタジオ・タイプ。

 

U.S. WINNER
Tiffany and Alanさん エントリ住宅
ティニータイニー部門 : 350 sq.ft.(32.52㎡)/ ニューヨーク・ブルックリン(←link)


Tiffany and Alanさん宅:ベッドまわり

実は、この住宅、エントリ時に見た時に、ヨナデンの印象はよくありませんでした。

部門の中では一番狭いティニータイニー部門 (TEENY-TINY)で、32.5㎡という日本の住宅の中でも

広くない住宅なんですが、見てすぐ、『あ、このインテリアは参考にならない』と思ったのでした。

というのは、この部屋、恵まれているんです。天井がすごく高い。たぶん4m近くあるんじゃないでしょうか。

空間が贅沢。元の部屋自体が天井廻り縁(クラウン)が重なった優雅な作りで、柱頭などのオーナメントが

あちこちに施されています。

まさに、日本人が想像する、年代もののニューヨークのスタジオ・タイプの一部屋、という印象でした。

『こんな部屋だったら、工夫しなくてもインテリアは映えるハズ』と、羨ましさ半分で、その時は思いました。


Tiffany and Alanさん宅:リビングまわり

我々日本人は、ニューヨークのスタジオ・タイプの住宅というと、こういう天井が高い、なんとなく素敵なイメージ

を持っていますが、実は、NYといえども、一般的な直方体(シューボックス)タイプのアパート住宅の多くは、

日本のワンルームと変わらないか、NYの方が地震や戦災もなく古い物件が多いだけに日本より薄暗くて汚い

場合も結構あるのです。(『靴箱のエレガンス 2』

昨年のSmall Cool 2013の優勝住宅だったGarrettさんのスタジオタイプの住宅が、まさにシューボックス・

タイプで、狭い空間でも狭さを感じさせず豊かに暮らす工夫がされていました。(『優勝住宅30㎡の快適』

 

狭いタイプこそ日本の住宅事情の参考になると思い込んでいたわけですが、今回、優勝住宅をじっくり見て、

元の素材のポテンシャルが高い部屋の場合も、その良さを活かすためには、デザイン的な工夫が必要である

ことがわかりました。

 

家主のティファニーさんとアランさん(Tiffany &Alan )は、たぶん若いカップルで、部屋のインテリアに、

それほど高価な家具などを使っているわけではありません。リーズナブルなインテリアの工夫で、この高い

天井の豪華な空間に対抗するとというのは、けっこうチャレンジングなことです。

 

彼らが最も工夫したのは、ベッドまわりだと思います。


Tiffany and Alanさん宅:リビングからベッドを見る

30㎡台の部屋ではいわゆるマーフィー・ベッド(収納式ベッド)を利用して、空間を有効利用するケースが

多いのですが、このお宅では、ベッドが常設です。その場合、スタジオタイプはベッドが常に丸見えになり

ますので、何らかの工夫があったほうがいいのです。

ティファニーさんとアランさんは、高い天井から垂れ下がるビッグスケールのベッドカーテン工夫することで、

スクリーンとしての役割と同時に、それ自体を優雅なインテリアの一部にすることに成功しています。

 

画像だけでは、全体像がわかりにくいかもしれないので、イラストにしてみました。

この部屋は、1800年代に船長が住んでいた古いレジデンスのパーラー(応接室)を、後に住居に改築した

ものらしく、全体的にクラシックな感じが漂っています。ティファニーさんとアランさんは、だからといって無理

してクラシックな家具を揃えようとせず、イスなどはデザイナーズですが、一体成型のプラスチック製を使って

います。

部屋に漂う優雅さを、高価な家具で補うのではなく、ビッグスケールのカーテンのドレープで調和させるとう

アイデアは素晴らしいと思います。

 

最後に、リビングの暖炉の前の白い2つのイスについて説明しておきます。

 

このイスは、デンマークのデザイナー、ヴェルナー・パントン(Verner Panton)の代表作であるパントン

チェアで、日本でも購入が出来ます(2014年7月現在、楽天価格で税抜9000円前後) 。

プラスチックの一体成型という画期的な手法で、まったく継ぎ目がありません。またスタッキング(積み重ね)が

でき、収納に場所を取らない利点があります。

下の画像は、黒のタイプで、ヨナデンが羽田空港のUPPER DECK TOKYO(アッパーデッキトーキョー)の

フードコートで撮影したものです。

この第2ターミナルの3階にあるテラスでは、世界の名作イス約260種がフードコートで使う普通のイスとして

使われていてもちろん実際にすわり心地を確かめることが自由にできます。

ここのイス達のラインアップを、近いうちに記事としてまとめますで、イス好きな方は楽しみにお待ちください。

 

以上、最後まで読んでくださってありがとうございました。

Small Cool 2014  のコンテストの様子については、記事『 Small Cool 2014 』 をどうぞ。

 

  『SMALL COOL 2014』 (2014年の小住宅インテリア・コンテストの様子)

  『SMALL COOL 2013』 (アメリカDIYサイトで人気の小住宅インテリア・コンテスト)

  『靴箱のエレガンス 2 』 (海外ブログ shoebox dwelling の小住宅記事紹介)

  『靴箱のエレガンス 3 』 (海外ブログ shoebox dwelling が紹介する寝具特集)

  『風のヒヤシンスハウス 1  』  (詩人 立原道造が紡ぎだす風の小住居。その概観)

  『方丈庵を解体してみる 』  (京都・河合神社の方丈庵レプリカ の構造を詳しく観察)

  『方丈:移動可能という夢 』  (方丈庵はこうして移動?庵のインテリアにも原典から迫る)