靴箱のエレガンス 3
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2013.06.15
ブログ『 shoebox dwelling 』 (←link) の記事特集、3回目です。
『shoebox dwelling (靴箱的に住まうこと)』 のブロガーであり、デザイン・ジャーナリストの
Natalia Repolovsky が記事にした小住宅を、前回、ご紹介しました(←link)
彼女が選ぶ小住宅は、靴箱(shoebox)的と否定的に扱われるタイプの
古い物件を、上手にリノベーションした魅力的な住まいが多く、
住まいを選ぶ際の彼女の視点を、次のようにまとめてみました。
スペースを有効利用した小さい生活空間であること。
小さいけれど、みじめではない、 住む人の尊厳を確保する
高品質で心地よい住まいを目指す。
そんなNatalia の小住宅の記事の中でも、特に、彼女がこだわっているモノが
あります。それは、 『ベッドまわりの空間』 です。
ヨナデンが知っているかぎりでも、『収納ベッド』テーマだけで、4つ以上の動画、
5つ以上の記事がエントリされています。
どうしてベッドにこだわるのか、真相は彼女に聞いてみないとわかりませんが、
想像するに、小住宅を快適に住まうためのライフスタイルの問題が、ベッドの
あつかい方に集約されているからだと思います。
なぜなら、住宅の規模が小さくなればなるほど、どうしても削れない『寝る場所』
の問題がクッキリと現れてくるからです。
ちょっと、下の画像を見てください。
これは、日本のビジネスホテルの典型的なシングル・ルームの見取り図です。
お仕事で出張が多い方は、利用される機会もあると思います。
この15㎡~20㎡ほどの空間の目的は、まず快適な睡眠を確保することで、
最近ではシングル・ルームでもベッドは大きいことをアピールするホテルが増え、
部屋の中でのベッドの存在がますます目立ってきています。
もちろんシングル・ルームは帰って寝るという一点に特化した部屋であり、
トータルな住居ではありませんが、小住宅とベッド・スペースのアンバランスを
極端な形で示していると言えます。
すなわち、
小さい住空間に、常設の寝具を工夫なくデンと置いてしまった時の圧倒的な占有率。
睡眠時以外はあまり機能しない道具が、リビングや書斎としてのスペースを制限して
しまう理不尽さ。こういった課題は程度の差はあれ、小住宅に共通のものです。
はたして、小住宅は、ベッドスペースを小さくしたり、快適な睡眠をある程度我慢したり
するべきなのでしょうか。
Natalia は、ユニークな小住宅のベッドスペースを紹介することで、『デザイン的な工夫
によって、快適な睡眠スペースは確保できますよ!』と、答えているように思えます。
前フリがまたまた長くなりましたが、彼女が紹介するベッドスペース確保のアイデアを
次の2つのアプローチから見ていきましょう。
収納・展開が簡単なベッド
ロフトのベッド・スペース
収納・展開が簡単なベッド
不必要な時に寝具を収納するアイデアは、つい最近まで日本ではほとんどの家庭で
採用してきたものでした。布団+押し入れという優れたシステムは、現在、旅館を訪れる
外国人に称賛されています。
ベッドの場合、ベッド枠そのものを収納するため、収納システムが大掛かりになります。
murphy hack in nyc (2012/03/22記事←link)
収納ベッドによる解決術 in ニューヨーク
ニューヨーク・リトルイタリーの320平方フィート(約29㎡)のスタジオタイプの改築例。
ブルックリンのデザイン会社『 Bigprototype 』が担当。
この壁面組込の収納ベッド( murphy bed )は、ウォールナット天板のシンプルな
テーブルも組み込まれていて、ベッド収納時には、テーブルスペースに早変わり。
一番下画像は、部屋の奥(冷蔵庫前くらい)から手前入口側を撮ったものだが、
かなり狭いshoebox住居であることがわかる。まさにこの収納ベッドの存在なしでは
手に入れられない住居空間といえる。
130 sq ft paris apartment (2013/04/10記事←link)
130平方フィートのパリのアパート
こちらは、なんと130平方フィート(約12㎡)のパリ・モンパルナスのアパート改築例。
建築家Marc Baillargeon と Julie Nabucet によるプロジェクト。
キッチンの床下部にベッドのマットレス全てを収納できる。昼間はマットレスを重ねて
ソファとしても使える。ベッド右側の階段も奥部分を引き出して収納スペースとして活用。
ロフトのベッド・スペース
ロフト部分を作ってベッド・スペースにするアイデアは、省スペースの常設ベッドとしては
ポピュラーなものですが、デザイン次第で、窮屈さを感じないステキな空間になります。
前回はハシゴで昇るシェイカー調ロフトと近未来的なロフト(←link) を紹介しましたが、
今回は印象的な小ぶり階段のあるロフトを見ていきます。
east village studio (2012/03/27記事←link)
イーストビレッジのスタジオタイプ住宅
ニューヨークのデザイン事務所『Jordan Parnass Digital Architecture(JPDA)』
のプロジェクト。イーストビレッジの典型的な細長いスタジオタイプ住居を改修して、
垂直方向に拡大(おそらく最上階のため、ロフト部分の天井など高くできたと思われる)、
寝室、ホーム オフィス、エンターテイメント エリア、ウォークイン ・ クローゼットなど
大型の設備の追加が可能となった。
small swedish apartment (2012/06/14記事←link)
スウェーデンの小さなアパート
スウェーデン・ヨーテボリのアパート。38㎡だが、狭さを感じさせない。
ロフトの天井まで連続している本棚が、ロフトまわりをスッキリ見せている。
本棚横の木のドアに見えるのは出入り口ではなく、階段下のクロゼットと
あわせて衣服の収納に使われている棚のスライドドア。
以上、3回シリーズでお届けしたブログ shoebox dwelling の紹介を終わります。
今後も興味ある記事があれば、随時紹介していきます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
『靴箱のエレガンス 1 』 (海外ブログ shoebox dwelling のインテリア記事紹介 )
『靴箱のエレガンス 2 』 (海外ブログ shoebox dwelling の小住宅記事紹介)
『SMALL COOL 2013』 (アメリカDIYサイトで人気の小住宅インテリア・コンテスト)
『優勝住宅30㎡の快適』 (Small Cool 2013 のコンテスト優勝住宅の紹介)
『方丈庵を解体してみる 』 (京都・河合神社の方丈庵レプリカ の構造を詳しく観察)
『方丈:移動可能という夢 』 (方丈庵はこうして移動?庵のインテリアにも原典から迫る)
『風のヒヤシンスハウス 1 』 (詩人 立原道造が紡ぎだす風の小住居。その概観)