もうDIYでいいよ。

靴箱のエレガンス 2

 

ブログ『 shoebox dwelling 』 (←link) の記事特集、2回目です。

 

『靴箱的に住まうこと』 と仮に訳している、この shoebox dwelling の 『shosebox』 が

あの靴箱のことで、直方体で面白味の無い、狭くて小さい住宅空間を示すネガティブな

意味があること、しかし、ブロガーのデザイン・ジャーナリスト、Natalia Repolovsky は、

この言葉をあえて使い、小さい直方体であることは人間的なスケールで空間を有効に

使いきる可能性を、逆に持っていて、シンプルで心地よい暮らしのアイデアを生み出す

基礎になると考えたのではないか、というお話を、前回しました。

 

 ヨナデンがブログから感じた彼女のモノ選びの視点の特徴は、こんな感じでした。

 


視点1 スペースを有効利用した小さい生活空間であること。
     小さいけれど、みじめではない、 住む人の尊厳を確保する
     高品質で心地よい住まいを目指す。
     訪問者を威圧するためだけのゴージャスで大げさな大空間、
     贅沢な家具、非効率な生活運用を必要としない。

 

視点2 必要のない時は、収納したり分解したりできる、
     存在を主張し過ぎない家具を志向。

 

視点3 立てかけたり、吊るしたり、重ねたり、畳んだりの
     物理特性が直感的に理解できる家具を志向。
     家具の動作が、ある程度予測できるので、
     誤使用による事故を回避しやすい。

 

視点4 形態がシンプルで、美しいこと。ユーモアがあること。
     退屈でないこと。楽しいこと。
     デザインの背後に、デザイナーのやさしさがあること。

 

 

 

上の視点1 のような小さくて機能的で品の良い住まいを、

Natalia は美しい画像とともにブログに紹介してきました。

今回は、その中から3住宅を選んでみました。

 

 

 


スペースを有効利用した小さい生活空間。
小さいけれど、みじめではない、 
住む人の尊厳を確保する高品質で心地よい住まい。
 

 

innermost house (2012/02/01記事←link)

最も内面的な住居

Diana Lorence と Michael Lorence 夫妻の、この12フィート四方(約3.7m四方)の住居は

カリフォルニア州北部の海沿いの山中にあり、電気も温水も使えない環境にある。

夫妻は、30年間ここをゲストハウスとして使ってきたが、最終的にここに引っ越してきた。

夫妻は、『豪華な生活(life of  luxury)』を過していると言う。もちろん何をもって豪華とする

かは人によって違うけれど、もしあなたの最も大切な事が、simplicity(シンプルさ)、

peace(平穏)、unobstructed conversation (つまらない邪魔が入らない会話)、

ability to contemplate(瞑想できる力)であるなら、ここは『豪華』な住まいに違いない。

 

 

 

 

 

 ny loft  (2012/10/01記事←link)

ニューヨーク・ロフト

韓国の建築家で、アメリカ在住の Kyu Sung Woo は、息子の住むロフトを

リニューアルして、全く新しい住居に再生させた。旧帽子工場のこのアパート

のロフトは、元は細長く暗く、キッチンやバスルームは部屋の一角にあって

窮屈だった。『マンハッタンの典型的なロフト建築でした』と、Kyu Sung Woo

は言う。彼は、レイアウトを完全に変更し、部屋の中心にキッチンを、その上に

ベッドルームを置いた。上の画像のように通路の部分には大きなクロゼットが

設置されている。 

 

 

 

 

 

shoebox elegance in nyc  (2012/02/15記事←link)

 

靴箱のエレガンス in  ニューヨーク 

最後の解説は、Natalia の記事の翻訳でなく、ヨナデンの文にしたい。

この住宅は、かなり狭くて、おそらく40平方メートルちょっとしかないだろう。

古いスタジオ・タイプをリノベーションで蘇らせた好例と、Natalia は評価している。

我々日本人は、『ニューヨークのスチュディオ・タイプの住宅』というと、なんとなく素敵なイメージ

を持ってしまうが、実は、このタイプの住宅の多くは日本のワンルームと変わらないか、

それどころかNYCの方が古い物件が多いだけに日本より薄暗くて汚い場合も結構あるのだ。

衝撃的な画像をお見せしたい。

Natalia が記事で紹介している、この住宅のリノベーション・プロジェクトの企画者である

イベント・プランナー、スタイリストの Jane Fife のブログ(←link) からの画像である。

  

この部屋の改修前の姿。これを見ると、いわゆる『靴箱の家(shoebox home)』と、

否定的に呼ばれる際のイメージが、およそどんなものか判るように思う。

そして、小さな住宅であっても、尊厳を持って豊かに暮らそうとする時に、

デザインの持つ可能性の大きさも、また実感する。

もういちど最初の画像に戻って、奥正面のシンメトリーの2つの窓に注目してみよう。

右側面にクロゼットや書架を作りつけたことによって生まれたシンメトリーの美しさ。

この部屋を格段にチャーミングにしているこの左右対称性が、Jane Fife がデザイン

する以前には、この部屋に存在していなかったことは、驚くべきことだ。 

 

 

 

以上、3例の住宅記事を紹介しましたが、最後の『靴箱のエレガンス』の住宅、

ベッドは何処?と、お思いになりませんでしたか?

寝室は奥? いえいえ、この部屋はほんとにコンパクトなんです。

ブログ記事のコメント欄でも話題になっていましたが、おそらく居間のソファが

ソファ・ベッドの仕様になっているんだろうと思います。

 

このような、小住宅における『寝る場所』の問題は、実は、ブロガーのNatalia が

『shoebox dwelling』 で、繰り返し追求してきたテーマでした。

また、そのテーマは、この『もうDIYでいいよ。』の『コンパクトな居住装置』シリーズ

の大きな関心事でもありました。

予定より長くなりますが、『靴箱のエレガンス』は、コンパクトなベッドのある風景を

巡って、次回記事に続けたいと思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

 

  『SMALL COOL 2013』 (アメリカDIYサイトで人気の小住宅インテリア・コンテスト)

  『靴箱のエレガンス 1 』 (海外ブログ shoebox dwelling が紹介するインテリア雑貨)

  『靴箱のエレガンス 3 』 (海外ブログ shoebox dwelling が紹介する寝具特集)

  『風のヒヤシンスハウス 1  』  (詩人 立原道造が紡ぎだす風の小住居。その概観)

  『方丈庵を解体してみる 』  (京都・河合神社の方丈庵レプリカ の構造を詳しく観察)

  『方丈:移動可能という夢 』  (方丈庵はこうして移動?庵のインテリアにも原典から迫る)