スライド丁番・収納階段
スライド丁番のノウハウを、『どこでも階段』に活かす。
収納庫であり移動式階段でもあるDIY家具、
『どこでも階段』 の2回目です。
今回は、階段の踏み板と収納庫のフタを兼ねる
天板の取り付けに使った スライド丁番
の話題です。
この丁番は、キッチンやクロゼット等によく使われ
ていて、たまにギシギシとトラブルことがあるので、
この丁番の特長と調整法を知っておくと、あとあと
便利です(調整法は最後に図解)。
この家具の外観のデザインですが、
リビングで存在感があるので、左上イメージのように
オブジェっぽくスッキリ見せたかったのです。
それで、普通の丁番を外から留めるのはもちろん、
嵌めこんで隠しても、軸の金具が出てしまうので、
不採用にしました(左中図参照)。
また、フタは手前を軸に開閉すると、構造的には
工作しやすいのですが、収納物を取り出すのにフタが
邪魔なので、これも不採用にしました(左下図参照)。
木工の経験がある方は、納得なさると思いますが、
上のような条件で、ピッタリとフタが閉まって一体化し、
見かけはひとつながりの階段にしか見えないように
するのは、けっこう工夫がいります。
そこで登場するのが、スライド丁番です。『?スライド丁番って何?』とおっしゃる方は、ご自宅のキッチン棚や
クロゼットを開けてみてくださいませ。‥たぶん下の画像のような丁番が使われているはずです。
この丁番を『どこでも階段』で使いました。
スライド丁番は、本体側の金具とトビラ部分のカップ部の金具に分かれています(下左画像)。
カップ部(下右画像はカップの裏側)は、フォスナービットなどで穴加工して埋め込みます。
このカップの空間に、トビラ部分を開けた時に伸展する回転軸が畳み込まれています。
スライド丁番には、3つの大きな特長があります。
①金具はトビラと家具本体の内側にあり、表側には金具が全く出ない。
②金具を取り付けた後、トビラの位置の微調整ができる。
③回転軸がスライドするため、トビラの開閉時、横方向のはみ出しが、ほとんど無い。
①はそのとおりで説明の必要はないと思います。
②は2mmまでの微調整で、前後・左右・上下できます、この調整でほとんどのガタツキは解消します。
これで解決できない場合、金具の取り付け位置が間違っていることがあります。調整法は最後に図解します。
③は、従来あまり触れられていませんが、スライド丁番の一番の特長と言ってよく、『どこでも階段』と関わり
が深いので、詳しく説明します(※スライド丁番には、全カブセ・半カブセ・インセットという3種類がありますが、
今回の記事は、すべて全カブセ・タイプについての説明です)。
比較のため、トビラの回転軸が隣接した2つのクロゼットを考えます。普通の丁番の場合、トビラの厚み分の
2倍以上のスペースが隣のクロゼットの間に必要になります。
スライド丁番では、トビラの回転時の横方向へのはみ出しがほとんど無く、クロゼットの間を非常に狭くできます。
壁面収納などの連続したクロゼットのトビラのほとんどにスライド丁番が使われている理由がこれです。
スライド丁番を使った結果、フタとなる天板と側板を密着させて配置し、
フタを閉じてしまえば、つなぎ目が目立たない階段が完成しました。
フタを開けた状態では下画像のように天板が自立して収納物の出し入れに便利になっています。
ただし、天板と側板を密着させるためには、少し工夫がいりました。
いわゆる『オープニング・クリアランス(OC)』の問題を解決する必要があったのです。
先ほどから、スライド丁番はトビラの回転時の横方向へのはみ出しがほとんど無いと書いてきましたが、
まったく無いわけではないのです。下の拡大図を見てください。
トビラが回転する軌跡を追ってみると一時的に外側にはみ出す部分があります。
この最大値を オープニング・クリアランス といいます。
トビラ幅が20mmでは3mm程度ですが、それでもトビラが回転する側の側面をぴったり
くっつけてしまうと、この部分の余裕がなくなり、トビラが開かなくなる恐れがあるのです。
『どこでも階段』の天板では、エッジにアールをつけるとともに、側板にくぼみを入れる
ことで、密着できるようにしました。
最後に、スライド丁番の調整法を図解しておきます
上の画像は一般的なスライド丁番ですが、これ以外のタイプもありますので、ご了承ください。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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