もうDIYでいいよ。

ネット買いバウハウス 2

『ネット買いバウハウス』の2回目です。

今回は世界遺産の話題から入ります。


上画像は、Willkommen im Reiseland Deutschland より

 

2013年のドイツの観光100選にも選ばれたこの世界遺産の目玉は、やはり、デッサウ市にある学校の校舎です。

前回、ほんの少し触ましたが、バウハウスというのは、20世紀前半に14年間しか存在しなかったのに、その後の

世界の建築・デザイン・美術活動に決定的な影響を与えたドイツの造形学校でした。

 

バウハウスは14年間に、国立⇒市立⇒私立と、めまぐるしく場所も校舎も変わっています。そして、1933年に、

ベルリンで閉鎖されてしまいます。当時のナチス政権はバウハウスを嫌いました。壮大なニュルンベルクの党大会

会場やゲルマニア(大ベルリン)計画を推進したアルベルト・シュペーアのような第3帝国様式の建築を好んだ彼らの

目からみると、バウハウスが生み出す作品は、奇妙で退廃的なものとしか映りませんでした。ベルリンでのゲシュタポ

による学校封印の悲劇は、バウハウスの輝かしい歴史の、ある側面でしかありませんが、その後、時代を経ても、

この学校が人々から愛惜され続ける理由のひとつでもあります。

 

さて、ネットで買えるバウハウス・アイテムの話に、なぜ、世界遺産の話題から始めるかというと、このバウハウスの

デッサウ市の校舎(および教員住宅)が、今回紹介するバウハウス・アイテムと 、とても深い関わりがあるからです。

そのアイテムを先に紹介して、バウハウス校舎の話をもう少し続けます。

 

ネット買いバウハウス。今回はマルセル・ブロイヤーのイス2点です。

(商品を特別に推奨するものではありません。イスを美しい画像で紹介されているサイトを選びました)


バウハウス・チェアBI-50

( BI-50 by Marcel Breuer )
作者:マルセル・ブロイヤー

マルセル・ブロイヤーは、家具工房主任
として教鞭をとっていた。このイスは展覧
会などで、B-5と紹介されることがある。

at-ease   ¥15,750円
(左画像は上記サイトより)

 


ワシリー・チェア
(Wassily Chair  by Marcel Breuer )
作者:マルセル・ブロイヤー

マルセル・ブロイヤーのイスといえば、
このワシリー・チェア。ワシリーの由来は
画家のワシリー・カンデンスキー。

mm interior space 青山¥103,950円
(左画像は上記サイトより)

 

 

この2つのイスでは、有名なのは圧倒的にワシリー・チェアですが、よりバウハウスのシンプルさに通じるのは、

BI-50(B-5)の方かもしれません。このBI-50を生産しているメーカーは、ヨナデンが知る限りでは、イタリアの

 SINTESI(シンテシ)社のみで、この会社は、本が中に浮いている

ように見える積み重ね型のブックタワーなど、日本にリーズナブルで

スタイリッシュなデザイン家具を輸出している中堅企業です。

輸入経路がひとつだけだからか? BI-50は値段的にショップによる

差はないようでした。

 

ところが、ワシリー・チェアの方は、すさまじい価格差があります。上で紹介したのは、イタリアで作られたリプロ

ダクト製で、この価格にプラス・マイナスでいうと、安いものではマイナス6万、高いものではプラス20万という差

があるのです。このあたりの差について、あとで触れたいと思います。

 

 

 

さて、世界遺産:デッサウの校舎の続きです。この建物は、バウハウス

の校長であった建築家ワルター・グロピウスによって設計され、1926年

12月に落成しています。ところが1932年には、デッサウ市制に勢力を

伸ばしてきたナチス党によって、デッサウ市立バウハウスは解散させ

られてしまいます。

 

今、バウハウスの顔としてよく知られるこの校舎は、実質6年程度しか使

われなかったことになります。第2次世界大戦中は、爆撃の直撃は免れ

たものの、ガラスはほとんど割れ、無残な姿を晒していましたが、冷戦時、

デッサウ市は旧東ドイツ側に再編され、校舎は改装されて東ドイツの工科

大学の校舎として使われました。

 

1989年にベルリンの壁が崩壊し、新生ドイツの元で、ようやく校舎は元の

状態へと丁寧に復元されて、1996年には世界遺産に登録されるとともに、

バウハウス大学が誕生しています。

 

ヨナデンが、この校舎を見学したのは、世界遺産登録直前で、結構自由

に中に入れました。でも教室に勝手に入って怒られましたけど(^Д^;)

 

さて、左の画像は、校舎の講堂ですが、イスになじみがあると思います。

そう、マルセル・ブロイヤーのBI-50に近いタイプのイスです。これは床に

足が固定されていますが、座面の処理とか、よく似ています。

 

ヨナデンがデッサウ市を見学した当時も、既にマイスターの宿舎の一部が

見られるようになっていました。マイスターとはバウハウスの教官で、彼ら

のアトリエ兼住宅が、やはりモダンなスタイルで校舎との近くに建設された

のです。

その住宅用のリクライニングチェアとして作られたのが、ワシリー・チェアで、

1922年に教官としてバウハウスに招聘され、1933年の閉鎖時まで、この

学校を見守ることになる画家のワシリー・カンデンスキーの名がつけられて

います。

 

左画像のワシリー・チェアでくつろいでいる教官がカンデンスキーだったら

面白いのですが、残念ながら、この人は予備課程の教官で、家具工房も

担当していたヨゼフ・アルバース。

 

 

 

さて、このワシリー・チェアですが、現在、アメリカ・ヨーロッパ・中国の色々な工房で作成されています。

そして、見事に値段が違います。

 

いわゆる『本物』『正規品』と呼ばれるものを作っているメーカが最も値段が高く、そして品質も良いと言われています。

それらのメーカーは、版権があった頃から製品を作っているので、『正規のライセンス・メーカー』というわけです。

そして、長く作り続けているので、プロの職人技・製品ノウハウの蓄積・アフターサービスが充実しています。

 

ただし、版権はいずれ消滅します。 そうするといわば、ライセンス料なしに誰が作っても良い時代になってきます。

最初は、ヨーロッパなどのある程度技術のある中堅家具工房がリプロダクト製品を作りはじめるのですが、そのうち、

新興メーカーが、もっと人件費の安い中国などの工場に委託するようになって、値段はどんどん安くなっていき、しかも、

外見は、『正規品』と、それほど変わらない製品が大量に出回るようになります。

まあ、それが悪いことだとは一概に言えないわけですが、とにかく、びっくりするほど値段の差が出てきてしまうのです。

 

ワシリー・チェアの場合、その『正規品』メーカーに相当するのが、アメリカのKnoll(ノール)で、knoll Japan のショップ

の価格と、例えば楽天最安値メーカーを並べると、2013年10月20日現在ではこんな感じです。

これと、全く同じことが、ミース・ファンデル・ローエのバルセロナ・チェアにも言えます。

バルセロナ・チェアは、よくバウハウス関連の家具として紹介されることがありますが、それはちょっと違うんじゃない?

と、いつも思います。たしかに、ミース・ファンデル・ローエはバウハウス最後の学長で、デッサウ校閉鎖の時も、

ベルリン校閉鎖の時も、重要な役割を果たしました。しかし、彼がバルセロナ・チェアを作成したのは、デッサウ校の

校長に招聘される前年で、バウハウスとは直接つながらない、ミース独特のシンプルさとゴージャスさを感じます。

それは、とにかく、バルセロナ・チェアも Knoll が手がけていて、上と同様に、knoll Japan のショップの価格と、

楽天最安値メーカーを並べてみます。

まあ、8万8千円でも、イスの値段としては結構な値段なので、比較に困るわけですが、リプロダクト製品と

『正規品』の微妙な作りの差と、リプロダクト品の意外な長所についてのニュアンスのある比較を、ブログ

『建築設計事務所の家具インテリア椅子ウォッチング』で、 高橋寛 さんが、バルセロナ・チェアについてお書き

になっているので、それを紹介したいと思います。

 

高橋さんは Knoll 製品が高価なのは、明快に、『ディティールの手が込んでいるからです』 と言われて、

次の点を整理されています。

 

1.クッションは、フラットバーに着かず離れずの絶妙の位置にあるが、これを見せるために
フラットバーにレザースタラップを、座に9本、背に8本取り付け。

2.レザースタラップの両端は、2本のビスで固定され。両端で4箇所で、17本だと68本の精密なビス止め。

3.フラットバーは、背と座の短部のみにあるように見えるが、これでは持たないので、背のx溶接部分に
フラットバーが仕組まれており、このフラットバーが背と座のスターラップで隠されているのが絶妙。

4.クッションは、座面で、20枚のレザーを縫い合わせてあり、裏側も同様に、20枚のレザーを縫い合わせ。
背も同様であるから、計80枚の縫い合わせ。

 

などなど。 それに比べて中国リプロダクトの場合は、

 

1.フラットバーの精度がなく、片方の椅子(高橋さんは2脚+オットマンをお持ちのようです)
は、4脚が完全に接しない。

2.フラットバー短部が水平でなく、床に傷つきやすい。

3.レザーの肌触りにマット感がない。

4.クッションが、ウレタンなので、レザースタラップに、微妙になじむ感じが出ない。

5.クッションの外形もモッテリしている。

6.なんと、クッションの裏側は、一枚張り。

 

と、厳しい比較(この特徴が上の8万8千円タイプにあるとは限らないので誤解のないように)。

ただし、5については、もともとミースが座っている写真にあるオリジナルは、今の『正規品』

のようにカチッとしすぎてなくて、丸みがあってモッチリしていたので、これはこれで良いとも。

 

まあ、一般人はここまでの比較は無理かなとも思ってしまう。

ということは、Knoll の良さが分からないのであれば、ある程度のリプロダクトでも

いいのかもしれない(^Д^;)

 

 

以上、最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

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