マティアスの木の機械
日本ではまだ知られていないけれど、Web で人気の海外の木工の達人を、これから時々、話題にしていきます。
今回は、カナダから Matthias Wandel (マティアス・ワンデル )と、彼の木工作品を紹介します。
(以下、登場される方々の敬称は略させていただきます)
Matthias Wandel(マティアス・
ワンデル)と、彼の木の玩具:
jenga pistol(ジェンガ・ピストル)
2009年
YouTubeより
マティアスは、彼のblog に biography を載せていないので正確な生年が不明ですが、大学の卒業年から推定して
1970年頃の生れで、今は40歳代の前半だと思われます。
彼の木工作品は好奇心や創作意欲を刺激しますが、YouTube の画像に登場するマティアスも、作風にふさわしく、
現在も、感受性豊かな青年のような風貌をしています。
上のYouTube (2013年12月) 画像でマティアスが比べている2つの機械は、右側が、彼のオリジナルの木製の
工作機械、『パンタルーター(Pantorouter)』 で、左側が、オリジナルの木の部分を金属にした複製品です。
パンタルーターが、木工家具を趣味とするDIYer 達にとり、どれほど魅力的な工作機械かは、後ほど触れますが、
この機械は、もともと一点だけ、彼が自分の工作のために作ったものです。
ただ、マティアスは、この機械の詳細な図面と解説、Google が提供している無料のCADソフト『SketchUp』に
取り込める3Dデータなどの資料一式を、18ドル(1800円程度。2013年12月現在)で、彼の blog で販売していて、
腕に覚えのある木工愛好家であれば、資料どおりに作ることで自分のパンタルーターが手に入るのです。
現在、続々と、彼のblog 愛読者作製によるご自慢のパンタルーターが作られています(下画像)。そして、
金属製のパンタルーターの完成品を、ライセンス料の支払いを条件に販売したいという人物まで現れました。
その人物は、なんと日本に在住のインド出身の Kuldeep Singh(カルディップ・シン)という青年で、彼は、
ちゃっかり、製品が 100% made in Japan であることをアピールしています。
こういう目の付けどころが鋭い若者が、日本人から現れないことは少し残念ですが、とにかく、マティアスの
blog は木工専門家として商業的な意味でも成功を収めていると言えます。
blog 愛読者が作ったパンタルーター。画像はblog : woodgears.ca より
マティアスの木工作品の特徴は、正確でメカニカルな機能性と、木材の柔らかい質感の対比にあると思います。
①木製コンビネーション錠の動作見本(wooden combination lock model)
②テーブル・ソーの角度調整と固定(Angle lock and table saw inserts)
③木製歯車の作製(How to make wooden gears)
④ルーターの角度を調整できるリフト(Tilting router lift)
機能性を追求する姿勢は、マティアスが2007年まで、エンジニアとしてカナダ有数のIT企業:Research In
Motion Limited(RIM:スマートフォンのブラックベリーで有名。現在はBlackBerry Limited に社名変更)で
活躍していたことと無関係ではないかもしれません。
(TORONTOIST『The Fantabulous Contraptions of Matthias Wandel』より)
また、木材への愛着は、彼の父 Winfried Wandel(ヴィンフリート・ワンデル)の影響もあるかもしれません。
マティアスは、アルプスに近い南ドイツのバーデン·ヴュルテンベルク州から、1980年に、カナダに移民した
ワンデル家の次男です(兄のマルクスのblog より)。
一家はドイツでは酪農業を営んでいたようですが、カナダでは父のヴィンフリートは木材業や家具作りで生計
を立てていたようで、マティアスは少年の頃から父の工房で木に親しんでいたようです。
(下画像の右は少年時代のマティアス。マティアス本人のblog より)
ヴィンフリートは、残念ながら昨年(2012年)亡くなりましたが、
彼の残した工房や道具類はマティアスらによって大切に保存されています。
(マティアスの blog 記事『Touring dad’s workshop (2013)』参照)
Winfried Wandel
(ヴィンフリート・ワンデル)
マティアスのblog記事 :
『Wooden grave marker』より
残されたヴィンフリートの家具を見てみると、優れた造形センスが感じられ、その資質はマティアスに
引き継がれているように思います。
(下画像は、マティアスの blog 記事『Some of my dad’s original furniture designs』より)
そして、機能性と木製品の良さがぴったり合致したマティアス傑作のひとつが、前に述べた
pantorouter
(パンタルーター)
2010年
パンタルーターは、ひし形が変形することで相似形を描けるパンタグラフの原理を利用してルーターを追随させ、
通常であれば作業が大変な、複雑な木工の継ぎ手のオス・メス部分などを、2倍サイズの原型を一つ作ることで、
いくつでも複製が可能なようにした工作装置です。
例えば、以下のような継ぎ手が、彫刻のようにルーターで掘り出せます。
もうひとつ、同じようにパンタグラフの原理を利用した、美しい形状の工作機械があります。
これは2次元の位置だけでなく深さも検出できる構造で、やはり2倍に作られた原型(テンプレート)をなぞる
ことで、ルーターが追随して、正確に2分の1に縮小して掘りあげます。マティアスは、テンプレートの文字を
活版のように組み合わせて、刻印プレート風のカービングに活用しています。
3-D router pantograph
(3Dルーター・パンタグラフ)
2011年
マティアスは、この機械で、父ヴィンフリートのための墓標を作っています。
以上、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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