雲形文様がなんか好き
にぶく語る / 愛着モノ / 銀粘土の焼成温度は800℃
2011.09.04
彫金教室で2年前に作った指輪です。
使っていたせいで、傷がはいっていますし、もともと、こんなアップに耐えるだけの造りこみができていないので、
見苦しくて申し訳ないのですが、気に入っているデザインなので、最初のタイトル画像にしました。
気に入っているのは、“雲形文様”です。
昔から、この文様になぜかココロ引かれるものがありました。
特に、渦巻く雲のオシリの部分に伸びている、あのシッポのような造形に、とてつもなく魅力を感じます。
平等院の雲中供養菩薩がお乗りの雲形のそれぞれにも、あの『雲のシッポ』が、見事な造形で彫刻されていて、
見ているとニヤニヤするのですが、画像でそこだけ切り取るのも失礼なので、ヨナデンの拙いイラストを載せます。
雲が前方に移動する際に、後方にできる、流体力学的な“たなびき”のような現象が、それはそれは巧みな曲線で
表現されています。
こういう、雲の表現は、日本で独特の発達を遂げたのではないでしょうか。
下の画像は、聖母被昇天と来迎図です。左図はマリアが天に昇っていく場面、右図は阿弥陀が菩薩を引き連れて
下界へ降りてくる場面です。左図でもわかりますが、西洋の天界の雲というのは、たいがい、『天国の領土』的な
表現で、その上に大勢の天使達が居て、歩いたりしており、一定の面積のある土地のような雰囲気です。
対して、来迎図の雲は、まさに菩薩達が乗る『乗り物』です。この場合は特に、臨終を迎える人が待っているので、
すごいスピードで、それこそ、後ろをたなびかせながら、雲は進んでいます。
上の来迎図は13世紀末ですが、すでに12世紀の日本には、スピード感あふれる雲の表現を得意とする絵師が
存在しています。信貴山縁起絵巻の『剣の護法童子』の場面です。 有名なのは、上図の輪宝を回転させながら
疾走する童子の姿ですが、童子が輪宝をホバリングさせながら清涼殿に降り立つ、下図のシーンに、ヨナデン的
には注目したいと思います。 ここの、渦を巻く雲の表現は、天才的なものを感じます。
こうして、たぶん中世~江戸時代の間に、雲形文様が抽象化されていく過程で、過去の優れた流体表現の名残が
あの『シッポ』として定着していったのではないかな、と勝手に考えているのですが、真相はどうでしょうか。
下の画像は、能の装束で厚板(あついた)と呼ばれる豪華な衣装を飾る雲形文様です。
抽象化された雲形文様ですが、その最も単純な形として、『一重の渦巻き雲+シッポ』というデザインで、
下の画像のような急須敷物を、DIYで作ってみました。
これは、実は、『宙に浮く曲げワッパのオヒツ』のオヒツ・パレットで使用した神代ケヤキ材の、円形にくりぬいた部分
を利用したものです。のせているのは、山形の菊池保寿堂のティーポット『縮緬(SHIBO)』。すばらしく美しい青緑色
の表情を持つ急須です。山形鋳物ですが、内側はホーロー仕上げになっています。
このSHIBOも入手してからしばらくは、箱から出したり入れたり、落ち着かせる場所がなかったのですが、この雲形
文様の敷物を作ってからは、テーブルにシックリ馴染んでくれています。
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