もうDIYでいいよ。

時空のおっさん仮説

 

8月のスケッチは、巨大掲示板2ちゃんねるが生んだ都市伝説、『時空のおっさん』です。

夏の納涼特集というわけではありませんが、一応、都市伝説っぽい作画にしてみました(^_^;)

 

ご存知ない方のために、『時空のおっさん』の典型的な話を10行ほどにまとめました。

そんな怖い話ではないので、安心して読んでみてください。

 

 

ふとしたはずみで、異次元の世界に紛れ込むことが、最近よく起こっているらしい。

その世界は、普段の世界と似ているけれど、

なぜか無人で、人の気配や物音が一切せず、空の色が異様に赤く、

街の看板が見たこともない変な文字に変わっていたりして、不気味な世界だそうです。

そのなかで、たった一人、何かの作業をしている作業服姿の人がいて、

彼が、こちらに気がつくと、ものすごく驚き、

『なぜ、ここにいるんだ!?』

『どうやってここに来た!?』 と、問いつめてくるそうです。

こちらが偶然の訪問者であることがわかると、迷惑そうな顔をしながらも、

けっこう親切に、もとの世界に戻れるよう助けてくれたりする。

そして、無事戻ってきてみると、その助けてくれた人の顔を、どうしても思い出せない 注1)

 

 

こういう異次元体験の報告が、2ちゃんねるのオカルト板に、大量に蓄積されてきました。

 

都市伝説には、優れた『語り部』が必要です。オカルト板が生み出した怪談には、『リョウメンスクナ』や

『八尺様』などがありますが、それぞれは、才能あるたった一人の語り部によってもたらされたものでした。

この『時空のおっさん』のユニークな所は、一人の語り部でなく、極めて多くの体験談によって成り立っており、

それが全体として、『時空のおっさん』世界をぼんやり浮かび上がらせている点にあります。

 

今現在も、『時空のおっさん』世界は、追加される体験談によって発展を続けており、

つい最近には、解読不能といわれるヨーロッパの古文書『ヴォイニッチ手稿』と『時空のおっさん』世界が

関連している可能性について語る語り部が出現し、この都市伝説は新しい段階に入りました 注2)

 

 

 

今回、お話しようと思っているのは、この『時空のおっさん』とは何かを自分なりに考えてみた仮説です。

またまた、『にぶく語る』世迷いごとですが、お付き合いください(^_^;)

 

注目したいのは、異次元の体験談のいくつかと、脳梗塞や多発性硬化症の発症時に見られる

高次脳機能障害(失語症など)が、よく似ている点です。ヨナデンは、この方面の専門ではありませんが、

仕事やプライベートの場面で、この発症例と接点があり、『人間の脳が何をしているのか』について

考えさせられることがありました。

 

我々が、視覚や聴覚の受容器からの生データを直接には味わっていないことはよく知られています。

生データは高次脳機能に送られて、我々にとって親しみあるものに再処理されたあと、初めて

意識的にフォーカスできるようになります。事故によって高次の色覚機能を失い、生データに

近い視覚世界を体験した人が例外なく、この世界を、『汚い』・『不気味』・『邪悪』と感じることを、

著書『火星の人類学者』で、イギリスの脳神経科医オリヴァー・サックスは指摘しています。

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)
火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

 

これと同じようなことが、日常生活の知覚処理に、脳内で効率的に行われていると仮定してみます。

 

日常生活から様々な刺激が生データとして入ってきます。特に、ヒト系のデータは、意味づけする処理の前段階は、

グニャグニャした動作と奇声だけのはずで、かなり不気味なものでしょう。これ専用の情報処理過程があるはずです。

 

このヒト系のデータを除いた残りが、モノ系のデータ処理の流れに乗ると考えます。

 

もうお分かりだと思いますが、この考察は、『時空のおっさん』世界がなぜ無人なのか、についての一解釈なんです。

 

身の回りのモノ系データを、脳内で効率的に処理しようとした時、ちょうどハードディスクのキャッシュ部分のように、

よく引き出される知覚情報のセットを、あらかじめ準備しておいて、天候や経年によって変化する生データの変数は、

それに加減する形にすると、処理時間が速くなるはずです。

 

そして、モノ系データのキャッシュ部分とは、我々が住む近隣の空間をそっくりまねた『模型』のようなものではないでしょうか。

 

よく、取り壊した前の家が、間取りもリアルに夢の中に出てきたという話を聞きませんか?

『あぁ、あの家は、ちゃんと頭の中に残っているんだ』という、切ない系の話。

脳内にそんな空間模型が、街スケールであって、高次脳機能作業体が、きめ細かく更新のメンテナンスをしているとしたら‥。

 

そして、何かの事故によって、意識がここにフォーカスされてしまったとしたら‥‥。

 

そのとき、意識が何を見るか、想像してみます。

まず、どこか別の場所に自分が移動してしまったとは感じないでしょう。

なぜなら、空間模型の世界にも、さっきまで居たリアル世界と対応する

まったく同じ位置関係の場所が存在するからです。

 

ただし、モノ系データが完全に整合される途上の世界ですから、

前に述べたように、まわりの色調や雰囲気が微妙に不気味で、嫌悪感を感じる

変化があるはずです。特に、モノの表面にある形象(文字や図形)に対して、

意味と呼び名のラベリング作業が不完全な場合、所々読めない不思議な文字

として知覚され、それが混乱を招くかもしれません。

 

しかし、もっとも混乱するのは、肉体動作関係のフィジカルな部分も含めて

ヒト系データが別処理で行われるため、いままでいた人々がごっそり居なく

なっていることです。

 

そして、そこで、いつものとおり更新メンテナンス作業に励んでいる、

または、意識が侵入したことを早くも察知して、意識を元の状態に戻すべく活動を始めた

『高次脳機能作業体』と、対面することになります。

 

 

つまり、『時空のおっさん』は脳内の自分自身ということになります。

高次脳機能作業体が、なぜ『(作業着の)おっさん』のイメージとして現われるか? ですが、①重要なメンテ作業を行なう、

②リビドー的に性的関心とは最も遠い(^_^;)不特定キャラクター、③ルールに従うため融通はきかないが信頼はおける、

というような存在のメタファーとして、その外見が、意識によって選ばれているからではないでしょうか。

だから、顔を思い出せないのではなく、彼等には個別の顔の造形が、もともと無いのです。

また、体験者によっては、『おっさん』でない姿で現われる例もあるのではないかと‥。

 

ある体験談では、現われた『時空のおっさん』の1人が、うっかり体験者と同じ名前であることを明かしてしまい、

同僚のおっさんから叱責されるという場面があります。

この叱責した同僚も実は同じ名前かもしれないというのが、この仮説からの推測なのですが、しかし一方で、

例えば、スズキさんの脳内で、スズキという高次脳機能作業体(群)が現われるという単純な話かというと、

これが、そうでもないのです。

 

どうも、体験談を重ね合わせていくと、スズキという『時空のおっさん』は、スズキさんの脳内の空間模型領域とは

ちがう、別の人の脳が創り出した空間模型領域らしき所をも巡回しているようなフシがあるのです。

言い方をかえると、この無人の空間模型領域は地続きに別の所へも、つながっているように見えるのです。

これがどういうことなのか、良くわかりません。そう見えるだけで、実際には個人の脳内で完結しているのかもしれませんし、

そうではなく、我々が時々味わう未経験な土地の不思議な空間記憶について、その理由を示唆しているのかもしれません。

 

ただ、個人の脳内だけで完結するこの仮説では、なぜ高次脳機能作業体のデータ処理結果が、他人とそれほど齟齬を

生まず、この世界の把握がほぼ共通なのか?を完全には説明できないことは確かです。

もしかしたら、この作業体は、どこか信じられないような手段で、全人類的な、または、アカシック・レコード的な何かと

ネットワークを持っているのかもしれないという妄想に行き着いたところで、この記事を終わりにします。

 

最後まで読んでくださってありがとうございました。

 

『エヴァ・デザインを楽しむ 1 』 (極太明朝体と周辺デザインの効果的な演出法)

『エヴァ・デザインを楽しむ 2 』 (六角形パターンとグリッド・デザインの上手さ)

『セレンディピティ仮説』 (セレンディピティとは、ホントはどんな能力のか?)

『アトムスーツと太陽の子』 (放射能の脅威と共に生活する時代が来てしまった)

  注1) 複数の体験談を合成してあります。
個々の体験談で、元投稿と最も近いものは、オカルト板まとめサイト
『死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?』の『時空の歪み』の中にまとめがあります

  注2)  『変なおっさんに拉致されていた』~ヴォイニッチ手稿との奇妙な一致(不思議.NET)
       時空のおっさん『ヴォイニッチ手稿~謎は夢のまま‥』 (不思議.NET)