もうDIYでいいよ。

柱頭を愛でる 1

 

明治の終わりから昭和初期にかけて、

『川崎貯蓄銀行』という関東の財閥系の都市銀行がありました。

 

この銀行は、その後、旧国立銀行であった第百銀行と合併、第百銀行は、さらに三菱銀行に吸収され、

現在の三菱東京UFJ銀行につながります。

 

今回の話題は、この旧川崎貯蓄銀行が、昭和の初めに東京と大阪に作った建物(支店)です。

それらは、いずれも本格的なヨーロッパの建築様式を取り入れた立派な建物でした。

もちろん、とっくに本体の銀行は無くなっているのですが、その支店の建物は別の所有者のもとで、

現在も、大切に使われているのです。

       

 

その建物まで出かけて撮っってきた画像がまとまったので、良さそうなものをUPします。

建築に興味のない方、ごめんなさい。でも、石造りの装飾が好きな方は楽しめると思いますよ。

というのも、見に行ったのは、建物というより『柱頭』だからです。

そう、柱頭好きなんです。⇒『玄関をクラシックモダン化 2 』

今回鑑賞できるのは、基本のドーリス式、イオニア式、コリント式の3様式です。

柱頭の様式は、その他、トスカナ式とかコンポジット式などがありますが、基本の3様式を押さえておけば

建築様式(オーダー)は、だいたい楽しめると思います。

 

さて、旧川崎貯蓄銀行の支店ですが、大阪に2つ、東京に1つ、残っています。

 

             a

     旧: 川崎貯蓄銀行 大阪支店  

    昭和6年(1931)

    設計:矢部又吉(推定)

    所在地:大阪市中央区南船場            

    

    現:堺筋倶楽部
      (仏・伊レストラン)
             

 

 

             b

     旧: 川崎貯蓄銀行 福島出張所

    昭和9年(1934)

    設計:矢部又吉

    所在地:大阪市福島区福島

 

    現:ミナミ株式会社
      (ニットテキスタイル)
      

 

 

            c

    旧: 川崎貯蓄銀行 富沢町支店

    昭和7年(1932)

    設計:川崎貯蓄銀行建築課

    所在地:東京都中央区日本橋富沢町

 

    現:ハリオグラス株式会社
      (ガラス食器・ガラス製品)
 

 

 大阪の建築を設計した矢部 又吉(やべ またきち:1888~1941)は、明治末にドイツの

シャルロッテンブルク工科大学(現在のベルリン工科大学)建築科で学び、川崎財閥系の

建築物を多く手がけた人物です。

 

        

 

以下、比較的大きな画像6枚を続けます(上記、a b c 順)。

 

   a 午後の強い日差しが凹凸を明瞭にしている。コリント式オーダーの角柱頭。 

 

  a エントランス上部。アルコーブの中に独立した門が嵌っているような演出。

 

 

     b 典型的なイオニア式オーダー。湾曲するファッサードがバロック的なニュアンスを加える。

 

 

  b これもバロック的な半円形のぺディメント。

 

  c コリント式大オーダーの角柱が二つの通りに並んでいるのは壮観。

 

  c 玄関は、ドーリス式の角柱頭の上部にイオニア式角柱頭を組み合わせてある。

 

 

上記の建物については、ネット上でも多数の記事が見つけられますが、

なかでも、より建築的な視点で、素晴らしい画像とともに解説されているブログがありますので、

2例だけご紹介します。

 

c の旧富沢町支店では、

 

Citta’Materia
Photo, Urbanism, Architecture and more

 

 sampomaster さんのブログ。全国の貴重な建築物を紹介するカテゴリ『ARCHITECTURE  FILE』

の中のエントリです。『ARCHITECTURE  FILE』には、既に取り壊されて現存しない名建築や、あまり

顧みられない市井の商店建築などが、見事なモノクロ・カラーの建築画像として記録されています。

例えば、白井晟一の旧親和銀行東京支店のエントリは、解体を惜しむ所縁ある人々のコメントも含め

歴史的な重みを感じます。リンクしたc の旧富沢町支店のエントリでは、上のサムネイルの画像である

“大オーダーの柱列の前を通り過ぎるバックパックの青年”の画像が秀逸で、これ自体、作品となっています。

ぜひ訪問して、大きな画像でご覧ください。(なお、a の旧大阪支店もエントリなさっています。)

 

 

 a・b の旧大阪支店・旧福島出張所では、

 

大阪の古建築
osakarchit.exblog.jp

kfschinkel さんのブログ。ヨナデンが大阪の福島をウロウロしていた時、突然出会ったバロック様式の建築が

b の旧川崎貯蓄銀行の出張所であることを教えてくれたのが、このブログでした。要所を押さえた豊富な画像と

博識かつ丁寧な(時々小気味よい辛口となる)解説によって、大阪近辺の古建築を知る上で、なくてはならない

アーカイブ・ブログになっています。個々の建築だけではなく、例えば、『阪神間(灘・住吉・御影・芦屋・西宮・

宝塚)の近代住宅建築群』のような、まるで、高級住宅街を散歩しているような楽しいエントリもあります。

なお、a の旧大阪支店のエントリは、内部装飾まで豊富な画像によって知ることができて、圧巻です。

 

  『玄関をクラシック・モダン化 2 』 (MoMaで購入した柱頭のレプリカを壊すまでの話)

  『隅田川テラス・橋めぐり』 (隅田川に架かる橋、両国橋から勝鬨橋までご紹介)

  『ありがとう東京タワー』(東京タワーのデジタル・アンテナを愛でる)

  『薬師寺東塔の水煙』 (天女が舞う水煙の詳細なイラストを大画面で公開)