もうDIYでいいよ。

雲形文様がなんか好き

  

 

彫金教室で2年前に作った指輪です。 

使っていたせいで、傷がはいっていますし、もともと、こんなアップに耐えるだけの造りこみができていないので、

見苦しくて申し訳ないのですが、気に入っているデザインなので、最初のタイトル画像にしました。

 

 

気に入っているのは、“雲形文様”です。

昔から、この文様になぜかココロ引かれるものがありました。

特に、渦巻く雲のオシリの部分に伸びている、あのシッポのような造形に、とてつもなく魅力を感じます。

 

 

平等院の雲中供養菩薩がお乗りの雲形のそれぞれにも、あの『雲のシッポ』が、見事な造形で彫刻されていて、

見ているとニヤニヤするのですが、画像でそこだけ切り取るのも失礼なので、ヨナデンの拙いイラストを載せます。

雲が前方に移動する際に、後方にできる、流体力学的な“たなびき”のような現象が、それはそれは巧みな曲線で

表現されています。

こういう、雲の表現は、日本で独特の発達を遂げたのではないでしょうか。

下の画像は、聖母被昇天と来迎図です。左図はマリアが天に昇っていく場面、右図は阿弥陀が菩薩を引き連れて

下界へ降りてくる場面です。左図でもわかりますが、西洋の天界の雲というのは、たいがい、『天国の領土』的な

表現で、その上に大勢の天使達が居て、歩いたりしており、一定の面積のある土地のような雰囲気です。

対して、来迎図の雲は、まさに菩薩達が乗る『乗り物』です。この場合は特に、臨終を迎える人が待っているので、

すごいスピードで、それこそ、後ろをたなびかせながら、雲は進んでいます。

 

 

 

上の来迎図は13世紀末ですが、すでに12世紀の日本には、スピード感あふれる雲の表現を得意とする絵師が

存在しています。信貴山縁起絵巻の『剣の護法童子』の場面です。 有名なのは、上図の輪宝を回転させながら

疾走する童子の姿ですが、童子が輪宝をホバリングさせながら清涼殿に降り立つ、下図のシーンに、ヨナデン的

には注目したいと思います。 ここの、渦を巻く雲の表現は、天才的なものを感じます。

 

 

こうして、たぶん中世~江戸時代の間に、雲形文様が抽象化されていく過程で、過去の優れた流体表現の名残が

あの『シッポ』として定着していったのではないかな、と勝手に考えているのですが、真相はどうでしょうか。

下の画像は、能の装束で厚板(あついた)と呼ばれる豪華な衣装を飾る雲形文様です。 

 

 

抽象化された雲形文様ですが、その最も単純な形として、『一重の渦巻き雲+シッポ』というデザインで、

下の画像のような急須敷物を、DIYで作ってみました。

 

これは、実は、『宙に浮く曲げワッパのオヒツ』のオヒツ・パレットで使用した神代ケヤキ材の、円形にくりぬいた部分

を利用したものです。のせているのは、山形の菊池保寿堂のティーポット『縮緬(SHIBO)』。すばらしく美しい青緑色

の表情を持つ急須です。山形鋳物ですが、内側はホーロー仕上げになっています。

 

このSHIBOも入手してからしばらくは、箱から出したり入れたり、落ち着かせる場所がなかったのですが、この雲形

文様の敷物を作ってからは、テーブルにシックリ馴染んでくれています。

 
 
 

  『掌(てのひら)の指輪』 (手のモチーフにまつわる話いろいろ)

  『銀のツマミの菓子器』 (男性でも使えるシンプルな菓子器の製作)

  『銀のタグ・プレート(前編)』  (コーヒーフィルターホルダーと銀細工)

  『銀のタグ・プレート(後編)』 (割れたプレートの修復と完成)